きぶんは年少さん

金爆と私と文化的生活

好きな漫画と私と恋人/日記

「この漫画、このシーンとかすごくいいのに、なんでここの展開はこんなにリアリティが無いんだろう。この台詞はどうしてこんなに侮辱的なんだろう。このキャラクターはすごく心情がわかりにくい。編集者は何も言わなかったのかな?……ねえねえ聞いてる?」
「う〜ん」
恋人はなんとも言えない表情だった。
何度かのねえねえとう〜んの往復があり、会話が行き詰る。
そのあと、はっきりと恋人は言った。
「細かいリアリティは気にならなかったけど、この漫画は面白くないよ」
まるで雷だった。

私にはその漫画の細部が腹立たしかった。
せっかく要は面白いのに!どうして!と息巻いていた。
だけどそもそも恋人にとっては漫画自体が面白くないし、私の指摘の是非も論じる価値はないものだった。
そのことが、私にはとても衝撃的だった。

だけど同時に、なるほどグダグダ言うくらいには私はこの漫画が好きなのかと悟った。
好きになりたいのに、もクソもない。
また漫画の中の「(私にとって)心情がわかりにくいキャラクター」と同じ顔をした恋人がそこにいた。
あ、こういうかんじかあ、とそっちも腑に落ちてしまった。
……何だったら、ミステリアスな恋人の謎を解き明かす鍵になる漫画かもしれないとすら思った。

おしまい